・それは このマンガ。『それでも町は廻っている』 。
表紙の感想を俺世界語で語るなら、
「僕はもうお前に負けた僕じゃない! なぜなら、それは、見たからだ!」
「見た?」
「そうだ!」
「何を見たって言うんだ!」
「世界をだ……!」
なんだけれども、
さすがに全力で説明放棄するのはどうかと思うので以下説明。
いやすまん、そりゃ嘘だな。説明メンドクサイネ。
俺の俺による出来事として完結すれば良い話なんだから、説明は以上。
そうだね、表紙の彼女の、世界を見通しているかのような純粋に自信に満ち溢れたポーズ・表情や、
世界の全てが彼女にあるかのような背景に心奪われたのだ。と。
しかしさすがにそれはアレなので、『それでも町は廻っている』 について軽く。
表紙を見ての通り、メイド喫茶なマンガだが、それは無関係。
「メイド喫茶なんて行きたいと思ったことすら無いんだけど」 とかそんな俺も大丈夫。
普通の喫茶店にメイドコスした店員さんがいるだけなわけだし、
入店時の挨拶なんてこれ。
とてもハートフルだな。
マンガは主人公の女子高生:嵐山歩鳥を中心として、メイド喫茶付近を舞台にノット超展開。
どう見ても普通な日常生活の青春がつづられた絵巻。
補習を受ける話とか、好きな人を映画に誘おうとする話とか、八百屋に買い物にいく話とかが見受けられる。
舞台が舞台でも、メイドメイドした萌え萌えしい話が出たりもしない。
大体なんでメイド喫茶なのかって言うと、
とてもハートフルだな。
俺的一押しキャラが、数学教師の森秋夏彦。
合理主義大好きで 理にかなわないことは大嫌いなキャラ。
こういうタイプは往々にして 空気を読まない正論で主人公を苦しめる悪役にしかならないんだが、
この森秋先生は違っていて、普通に人間らしい側面も見せるわけですよ。
「こうなった以上 アルバイトの許可をもらうしかないわね」
「そうだとも 僕だって別にやめさせに来たわけじゃない」
のやり取りとか。
数学教師になるに至った過去も作中で説明されていて、それが普通に読者にだってあり得る理由だし共感できる。
特にオススメなのが第4話でね、
この話は、森秋先生の祖父が残した 不可解な芸術品の制作背景解明を 探偵志望の嵐山歩鳥に依頼する話。
「知っての通り 僕は数学教師だ
『この絵を描いた時の画家の気持ち』? ハッ ナンセンス!!
当事者本人でもないのに そんな事わかってたまるか!! ハハ
しかし正しい推察のもとに答を仮定する事くらいは可能な筈だ」
のセリフとかいいよいいよー。
芸術品とは 「4つ眼の自画像」 なんだけれども、
このトリックが見事に解明される様はスカッとするね。ハッピーエンドに終わるし。
また、作品世界の創造が上手なのも読んでいて安心する。
マンガには描かれないだけで、それ町世界が実在するのだと思わせる造りになっていて素敵。
たとえば 「辰野トシ子」 っていうキャラがいるのだけど、
彼女は下の名前が本当にカタカナ交じりなのではなく、その漢字名は作中にこっそり描かれていたりするのとか良い。
他に 新キャラが登場の数話前に1コマだけ姿を見せている仕掛けや、嵐山歩鳥の両親の存在比重もテクニカル。
そんな訳で大当たりなマンガでした。たまには表紙買いもしてみるもんだな。
好みの超偏った俺ですが、普段の各種紹介と違って、これは万人にオススメできるタイプの漫画です。おすすめ。
ちなみに初めて表紙買いした本は、『ブギーポップは笑わない』 です。
書店で初めて目にした時は、全身に電流が走ったような衝撃を覚えたよ。