覚悟のススメ完全版4,5巻の話

・やばい。面白すぎる。

つまり、ギャグ格好いいの極みである 『覚悟のススメ』 を読んだわけなんですけど、なんていうかもう熱すぎる。

1巻からして普通のマンガを遥かに凌駕する煮えたぎり具合だったから、

「最後までこの熱度を続けられるのか?」 と不安になったりもしたけれど、

巻を進めるごとに一層熱さを増していくわで そのような不安は無用だった。


ここに来て簡単に内容説明をすれば、

人類を抹殺しようと目論む現人鬼・散 (はらら) と、

人類を守ろうとするヒーロー・葉隠覚悟の闘いを描いた、バトルアクション物。

「主人公がヒーローで熱血ものなら、どうせ人類愛とか説きまくる系だろ?」 と思うかもしれないけれど、それは無い。


とかく、覚悟のススメの面白さは人が信念を通そうとする姿にある。

こないだ何処かのブログかブログ記事のコメントで、

「人の不幸話が面白いのは、幸せは没個性だけど、不幸は個性的だから」という発言を読んだけど、人の信念もまた個性的であるわけで。

人の信念や欲望、情熱をきっちり描ききったマンガは面白いと思うのですが、

覚悟のススメはその信念の塊のようなマンガです。

こういうわけで、「人にとって信念や情熱に勝るものはない」 という考えの俺が一層強化されたわけです。

まあ物理的にも、

つーかあらゆる方面から考えても無理がありすぎる散様の復活には 「それは流石に魂や信念の可能性を求めすぎだろ」 とは思った。

これがチャンピオンか。そりゃあ塩漬けの中からピクルも復活するわ。


別に主人公の夢が 「仲間を大切にしたい」 とか 「夢を追いかけたい」 とかでも、それは何でも良いのだけれど、

それを達成するのは、個人の欲望によってであって欲しいんですよ。

シグルイでも 検校が 「目明きの人に武芸の域でも勝りたいから」 というだけで伊良子清玄を保護するから良いのだし、

ビッグコミック連載中の『ダブル・フェイス』にて 正義を実行する秘密結社に属する主人公の活躍理由は、

「人間のあらゆる面を見たと豪語する上司に 「正義だけは見た事ないのでお前ちょっと正義してくれ」 と命令されたから」 だし。

綺麗事は言っても良いのだけれど、それがお前の欲望・信念であることは自覚してくれよな? 的な感じ。

何か話ずれてきたな。

まあ、そのような動機はジャンプとか真っ当な少年誌で描かれないし (少年のうちからそんな概念学ばせるなよ って話だよな) 、

それなのに公共の福祉とか綺麗事を超スルーして、堂々と個人の欲望の為の努力を描くチャンピオン漫画はやっぱ凄いなあと思いました。


そして名言のオンパレードっぷりが凄い。どのキャラも言う事言う事が心に残りすぎる。

「あたしだけグリコ…」 とかどうでもいいのに心に残るセリフもあるけど、

特に4巻収録 朧in雹 対 散in霞 の決戦は、発言8割がたが名台詞。

「私は兄上を信じています!」「知っている だが 散はもう人間を信じることはできぬ! 憎み切った!」 や、

「どうしても人の上に咲くのか! 野に咲く花に笑われようぞ!」「ご心配なく! そのような花などは一掃してしまいますゆえ!」、

「おまえのような莫迦はいらぬなり!」「その言葉待ち焦がれておりました!」 など、

名台詞が何故格好良いのかよく分かる。

「美しさは兵器」 とか ともすればありがちなセリフでも、

メインの 「散の燃える口づけを受けて 人間ではいられなくなったのだ!」 というセリフの締めに使われていて、非常に映える。

それと 「何という愚かな思想! 哀れな魂! 最 終 審 判 この掌が救済つかまつる!」 のリズム感の良さは異常。

声に出して読みたい覚悟のススメだ。

覚悟のススメは100話しかないけれど、名言の数はジョジョに匹敵するのではないかと思えるほど。密度でなら確実に並ぶ。


つーかこの日は積んでたマンガを読もうかとか思っていたのだけど、

覚悟のススメ読み終えた後には身体の火照りが止まらず、「こりゃ今日もう他のマンガ読めないな」とまで思ったほど。

読了後は部屋の中を意味も無くうろうろ20分以上も歩き回ってて、

「これは流石に休日を無駄に使っているだろう。

でも、この読後感で今日一日を火照らせたまま過ごすのも良いなあ」 とか迷ったよ!

今まで読んだマンガの中でベスト3に入る面白さだった。残りの2つはまだ決めてません。