・特殊能力バトル全盛の世の中に、意味不明な能力の頭脳バトル漫画が現れた!
それが少年ジャンプ+で連載中、 『ハイパーインフレーション』 だ! (作者:住吉九)
漫画でよく見る特殊能力と言ったら、時間停止だとか不死身だとかバリエーション豊かですが。
『ハイパーインフレーション』 の主人公に与えられた特殊能力は、マジで激レア!
その特殊能力とは、ニセ札を身体から出せる能力!
おいおい何それ?
意味不明すぎるよー、って思っちゃうところですが、これが激アツな漫画で面白い。
特に今ここでお伝えしたいのは、この漫画はめちゃくちゃ読みやすいってことです。
お金が絡む頭脳バトルって、駆け引きが難しかったり、とっつきにくそう……
そう思う方もご安心ください!
現在少年ジャンプ+で10話目まで連載中ですが、今のところすんなり読める。
何故かというと、この漫画は二重に作者の工夫が施されているからです。
これは勝手な推測だけど、作者の住吉九先生はきっと漫画編集者だったのではないだろうか?
「読みやすい漫画を作ること」 を考え抜いた経験のある元漫画編集者ではないか、と!
ここでストーリー説明だ!
シンプルに一言で言うね。
この漫画は 「身体から贋金 (ニセ札) を出せる主人公:ルークが、姉と自分の民族を救おうとする話」 です。
"自分の民族を救おう" って動機、最近あまり見ないよね。
ひょっとしたら、すげー暗くて重たい漫画かなー、って思ったかもしれない。
でも安心してほしい! マジで熱くて楽しく読める。
どうして楽しく読めるかというと!
工夫その1:シリアスな笑いのあるギャグ漫画としても読める。
主人公たちは真面目に事を起こしてるけど、作者の言語センスが独特で、思わず笑っちゃうコマが多数!
他の漫画でたとえるなら、『彼岸島』 なのかなあ?
個性的なセリフ回しを読みたい人にもオススメ。
「それを言いにわざわざ……!?」
「サクラはサクラでほかにおる!!」
「俺に競り勝ちたきゃ 印刷機を持ってこいッ!!」
「全部の指にささくれを作ってやる」
「ハル姉をくらえェ!!」
「う~ん 涅槃!!」
など、一度漫画で読んだら忘れられないインパクトあるセリフが盛りだくさん!
集英社は早く 『ハイパーインフレーション』 のLINEスタンプを作ってほしい、絶対買う。
もちろんセリフだけじゃなく、アクションも面白い。
話の流れとしては正しいことをしているのに、勢いが凄すぎてギャグだったりする。
主人公を篭絡しようとするおっさんが、少女マンガ風なトキメキを見せるギャップとか!
船仕事をする奴隷たちが、まるでボディビルポーズの博覧会だったりとか!
機械人形だからという建前で、人形が場に合いすぎな動きをするシュールさとか!
随所に笑いどころが仕込まれてるのよ。
話をあまり分からなくても、ギャグを追うだけでも楽しい。
本編だってよく出来ている!
工夫その2:物語の見せ方がうまい。
この漫画のよく見る感想で 「まだ〇話目だったのか」 ってのがある。
どうしてそう思うかと言うと、とにかく密度が濃いから!
1話あたりの情報量が多くて話が進むから、1話で普通の漫画を数話読んだようなお得感がある。
それなのに、物語はするすると頭に入ってくる。
何故かといえば、見せ方が上手い!
複数の出来事が交錯する流れでも、ここを見てくれという一本に絞って描かれている。
だから 「この漫画って今何をしているのだっけ?」 ってことにならない!
「話をあまり分からなくても楽しい」 と書いたけど、分からないってことにまずならないので安心だ。
「いや頭脳バトルって言われてもー俺は 『ライアーゲーム』 より 『嘘喰い』 派だしー」 みたいな人にも安心だ。
ご安心ください! バトル描写もある!
というか 『ハイパーインフレーション』 は、残酷描写も上手だよ!
こういう描写ならスゲェ痛そうとか、凄惨な殺戮というシーンの描写もきちんとしてる。
中でも、一番感動した工夫はこれ。
工夫その3:ストレスになる枝葉を残さない。
「読者が本筋以外の要素で気にしてしまいそうな些細なポイント」 にまで、かなり気を遣って描かれている!
作者の住吉九先生が元漫画編集者なのではないか、と推測した理由もこれです。
未読の方には、ちょっとネタバレになってしまうけど……
・仕込んだサクラが存在だけ語られるのではなく、きちんと働くこと
・首長が騙されるだけでなく紙幣の綺麗さに気付くこと
・反乱計画がオークション終了まで伏せられて話が散らばらないようすること
・3話目を細切れで更新せず、ハル姉の生存可能性まで一気に読ませることなど
この辺りはマジで感心した。
ストーリーとは関係ないポイントでストレスを覚えないようにするって工夫が上手。
そういう数々の工夫に加えて!
『ハイパーインフレーション』 で一番好きなのは、敵役:グレシャムがめっちゃ魅力的なことなのよ!
主人公以上にライバルキャラが魅力的なのは、大傑作漫画の資格が大ありだろう。
特に俺が好きなシーンは、第3話目のグレシャムが参加者の金品を盗むシーン!
この行動がマジ神がかってるね。
ここでこの蛮行!? って予想外のインパクトはあるのに、ここまで描かれたグレシャムのキャラクターとして自然。
それでいて欲深く狡猾なグレシャムの一層のキャラ立てに成功してる!
主人公が敵対する全員の目を盗みまんまと逃げおおせたのでなく、誰かの目には留まってはいたという事実も良い。
誰かに見付かってたことでご都合主義のかき消しもされてて、幾重もの工夫が詰まっていて感動しきりだよ!
主人公とグレシャムの今後のライバル関係を予感させさえもする、この漫画屈指の名シーンだ。
頼むから3話目まではぜひ読んでくれ!
それに敵役:グレシャムを支える右腕:フラペコもまた熱い!
順を追って読むと、安全圏からイキるだけの貧弱ビビリもやしメガネかと思えるフラペコ。
でも実は肝が据わったスゲェ肝っ玉ド根性男だと分かる第4話も激アツだよ~。
フラペコはカイジだ、『ハイパーインフレーション』 の伊藤開司だ!
ごめんさっき3話目までは読んでほしいと書いたけど、やっぱ4話目も読んでくれ!
グレシャムとフラペコがここに至るまでの過去を描くスピンオフ漫画を既に読みたいよ!
そんな大傑作を予感させる 『ハイパーインフレーション』 ですが!
何とその単行本第1巻が本日2021年4月2日に発売だ!
1巻の続きはジャンププラスですぐに読める! (2021年4月2日現在)
ぜひ読んでほしい!