Mission.53 【副都心へ】 感想

・「今週の内容は完全に謎だ」 と書いたけれど、別に普通に前回の続きだったよ。

無事に高放射線帯をぶち抜けて、お祭りムードの生存者たちからスタートだ。

そんな今週の 『COPPELION』 感想。


放射線放射性物質に囲まれた地区から生存者を救出する」 という、成瀬荊たちの武蔵野電鉄作戦。

読者時間で半年以上に及んだこのミッションも、とうとう前回 最大の難関を突破した。

源内さんの被曝や 黒澤遥人との死別などの痛ましい犠牲を払いつつも、

人類滅亡のために動いていた第一師団の団員達さえも救出に成功!

生存者救出を任務とするコッペリオンとして、充分すぎるほどの功績だろう。


唯一気がかりなのは、梶井息吹さんの出産だが……

その様子を無線で聞く、梶井息吹のダンナさんと梶井五次郎のやり取りはまるでコントだ。

外科手術には自信のある野村タエ子も本領発揮!

帝王切開の描写は全力でスルーされてしまったが、お産はどうやら順調に進んでいるらしい。


「深作葵が第一師団に祭り上げられて、困って逃げ惑う」 というギャグ描写もあるんだが、

それより黒澤遥人の形見として渡されたものが、爆弾だったことの方に笑ってしまった。

感動シーンのはずなんだけど……ここでもまだ爆弾かよ!?

さすがに敵からも味方からも爆弾魔呼ばわりされてた黒澤遥人だけあるなあ。

成瀬荊がその爆弾を見て涙するシーンとか、微妙にシュールだ。

きっとこの後、「成瀬荊が残された爆弾でピンチを切り抜ける!」 ってシーンが来るんだろうな。


さて。

 


ガシィィ ガシィ  ガガ ゴゴ ゴ…  ドシャァ

 


「生きてっか? 妹」



「あ‥‥ 姉貴‥‥?」


小津詩音は生きていたー!

さすが近未来の科学の粋の結晶、コッペリオンだ!

骨肉組織に超強化の施されたその肉体は、コンクリ瓦礫に潰された程度じゃ致命傷にならないんだぜ!(゚∀゚)=3

電撃を武器とする 姉:小津歌音とも再会して、最凶姉妹の復活だ!!

さあ、これから成瀬荊たちを追い掛けるのか?

それとも邪魔者のいなくなった死の街で、石棺を爆破に向かうのか!?


――しかし、小津詩音が選んだ選択は……


「ボク‥‥がれきでグチャって潰されちゃったんだよ‥‥?

普通の‥‥まともな人間なら‥‥ 生きてるはずないよね‥‥」


「なんで‥‥?

なんでボクはまだ生きてるんだ‥‥

痛いよ‥‥姉貴‥‥

身体中が‥‥ 痛くて痛くて死にそうだよ‥‥」



なのに‥ なんでボクは死なないんだァァ―――!!!


小津詩音の叫びが響きわたる。

……彼女にとって、瓦礫の下敷きになってすら死ぬ事のない 怪物のような肉体は、

誇るべき武器でも、俺のようなクリーチャー好きを喜ばせるためのものでもなく、

人命救助の御旗の元に行われた 地獄のような拷問の記憶でしかなかったのだ。


……その忌むべき身体さえも利用して、自らの創造主である人類へ刃を向けたのは、

任務のために送り込まれた東京で、志おなじく 人類への報復を考える第一師団と出会えたからなのだろう。

黒澤遥人と一緒に掃除係として東京へ赴いてきているのだから、

きっと第一師団こそ、彼女ら姉妹にとって初めて出会えた 同じ相手を心から憎む存在だったと思われる。


しかしそんな第一師団は、成瀬荊の甘い言葉に いともたやすく心変わりしてしまった。小津詩音の潰れるすぐ隣で!

生物の位置を感知できる小津歌音にも、第一師団の裏切りは伝わった事だろう。小津姉妹は、世界に二人ぼちなのだ。



「もう生きたくない‥‥

こんな命いらないよ

どうせボクらは‥‥ある日 突然動かなくなるんでしょ‥‥? なら‥‥今ここで消えたって‥‥」


肉体は壊れていなくても、心は既に折れていた。

そんな妹:小津詩音を、姉:小津歌音は無表情で見つめていたが――



「バカかおまえ 痛いって感じるだけ幸せじゃねーか

オレはな‥‥何も感じねーんだぞ

ずーっと身体中電気でビリビリしびれちまってててよ‥‥ 痛いってことがどんなのかも分かんねーんだ」


とんでもない展開だよ!

今までの話を振り返ってみたら、たしかに 「痛い」 って事を小津歌音は言ってなかった!

っていうかいやいやいや、マジで無茶苦茶だ。

これでそのうえ 「コッペリオンは突然死する」 との秘密を知ったなら、そりゃあ人類皆殺しを考えるよな。


かつて成瀬荊から、突然死の運命を受け入れるというような発言をされた時の言葉、

「オレはやだね 全員皆殺しにしてやるんだ

この放射能まみれの街 人間どもが死都と呼ぶこの世の果て‥‥

世界中がこうなりゃいいんだ そうでもしねぇと‥‥ オレの電気が収まらねぇ」 とは、

比喩でも何でもなかったって事だよ。

成瀬荊から 「軽はずみな人体実験とは違う!」 なんて言われても、じゃあこの電気はなんなんだ? って話だよな。

人命救助だよ! マジでそんなもんのためにオレらコッペリオンが作られたと思ってんのか!?」 とはこのことか。

人間の手によって、生まれた時から一生痛みを感じられない身体に造られていたとは、まさに人形。

許そうと考えるわけがない。


その小津歌音は、瓦礫に潰され心は折れて 投降しようと呼びかける小津詩音に対し、

「乗れ」 「詩音」 と、滅多に呼ばない名前で妹に声をかけ、背を向け歩き出した……?


場面は武蔵野電鉄の中へ変わる。

成瀬荊たちは、夕焼けに染まり始めた副都心に目をやっていた。

電車を運転しているのは梶井五次郎さんだろうか。

三鷹駅新宿駅を結ぶ中央線は、新宿直前の東中野駅まではカーブもない真っ直ぐな線路が続いている。

もはやこの救出作戦に、不安要素はない。

後はほんの少しでも長く、源内の命が続いてくれることを願うばかりであったが……


「う‥‥ 嘘でしょ‥‥?」



鉄グモの残骸を電撃で操り、作戦完了寸前に現れたのは小津歌音だ!

おそらくこれが、最後の戦いとなるのだろう。

長らく姿を消していた小津歌音は、この鉄グモの残骸を探しに行っていたのか。


……小津歌音にとっては、この戦いに勝ったところで、未来を変えられるわけではない。

小津詩音が人間になれるわけでも、自らが痛みを感じられる身体になれるわけでもない。呪縛は解けない。

それでもなお戦いを挑むという凄まじく悲痛な場面であるんだが……

「予想は裏切り! 期待は裏切らない! 井上智徳先生スゲェ!」 とか思ってしまった。

小津詩音がどこかに乗っていないだろうか? と探したりね。ははは。


これだけの巨大な鉄塊を、電車よりも速く操る小津歌音にかかる負担は半端でないだろう。

小津歌音は、ここで死ぬつもりなのだろうか……? そして小津詩音はどうなるのか。

to be continued・・・・・・・・ 緊迫の次号へ続く。