「殺してでも うばいとる」 を地で行く、アントン・シガーを見る映画

・これまでに無い変態殺人鬼が出ると聞き、

気になっていた 『ノーカントリー』 をようやく観賞。


お話説明。

麻薬取引のお金をネコババしちゃった男性が、謎の組織の追っ手 (変態殺人鬼) に追われて さあ大変!

そんな感じ。

他の登場人物は ストーリー解説役を除けば、ほぼ全員が殺人鬼のキャラ立て要員だった。つまりは餌食。


で、この変態殺人鬼、

というか変態でなく、気がお触れになってる殺人鬼 アントン・シガーが、とにかく殺しまくる!

息をするかのように人を殺めるタイプで実にやばい。

観客が注目するなか堂々と殺す、観客が予想していない瞬間にも殺す、カットとカットの間にも殺す!

アントン・シガーがドラクエのキャラだったら、

コマンドは 「はなす」 「どうぐ」 「しらべる」 「ころす」 とかになっていそう。


「でも、「はなす」 コマンドがあるなら話は通じるんでしょ?」 と思うかもしれませんけど、

アントン・シガーは、会話の面でも危険人物だったよ!

全く私たち常人は狂人の精神性を表現するために 生とか死とか痛みとか世界が醜いとか言わせたくなりますが、

そんな事を考えるよりも前に、アントン・シガーと雑貨屋店主との会話シーンを見るべきなんだ。

話が通じないとはどういう事か?

何も知らない雑貨屋店主が気まぐれに殺されない事を、我を忘れて願ってしまう名シーンです。

ここはラストにまたあるシガーさんの会話シーンと比べるべくして用意されたシーンでもあると思うので、

ノーカントリー』 を観るというのは、シガーさんの一挙一動に注目する行為とも呼べるかもしれませんね。


そして最も印象に残るのが、閉ざされた部屋への侵入方法。

普通、恐ろしい人から逃れるには、

「部屋に鍵かけて閉じこもってりゃ良いんでない?」 ってのが当然の発想じゃないですか。

これをどう破るかがホラーキャラの醍醐味であって、

ジェイソンだったらチェーンソーでドアをぶち割るし、化け物は力ずくで部屋を破壊するし、

心霊系化け物だったら音も無く入ってきて後ろに立っている ってのがパターンじゃないですか。

でもシガーさんは普通のおっさんだから、道具を使うしかない訳なんですよ。

しかも怪我をしたら薬局へ行くような (行く方法が尋常でないんだが) 人なので、

チェーンソーみたいな明らかな凶器を持って歩いていたら、一発で逮捕されてしまいます。

じゃあ何を持つ?

そこでシガーさんが凶器に選択したものは、なんと酸素ボンベ!

というか、酸素ボンベ付きのエアガンがメインウェポン。

こいつによって安全地帯がシガーさんの行動範囲へ化す、ドアの鍵が無効化される瞬間は、

「ベッドに入って怖い妄想をする時に思い浮かべる光景」 ベスト10入りする事うけあい。


余談。

2008年に日本で公開されたアメリカ映画では 『ノーカントリー』 が1位2位を争うほどの傑作らしいという事は、

ラストの意味がよく分からなかったので解説を探してみて知りましたよ。そうなのか。

アメリカをよく表しているとの事らしいので、多分ちょっとでも知識のある人なら意味はすぐに分かったものかと。

とはいえそこを抜きにしても、アントン・シガーに追われる恐怖だけで楽しめる傑作でした。