・最終回なんですよ。
始まりがあれば終わりもある、という定型句はさておいて。
氏家ト全先生のマガジンSPECIALにおける連載作品 『プチプチたんたんプチたんたん』 が、今月号をもって最終回!
陽汝学園を卒業する花園ハナたちは、どんな未来へ歩き出すのか?
そんな訳で、最終回である第52話 【新しい生活】 の感想。
最終回の幕を開けたのは片岡ヒカリ。
思い返せば第1話で1コマ目から登場したのも片岡ヒカリだったねえ。リフレインである。
何気に片岡ヒカリのメガネが連載途中で変わっていたことに今更気付いた (遅) 。
第23話のあまてら荘の宣伝写真を撮影するエピソードから変わっていたとは。
そんな思い出もあるあまてら荘を去るところから最終話はスタートですよ。
3年過ごした自室に別れを告げるシーン、1ページだけでお別れ終了。
漫画によってはクライマックスにもなりそうなシチュエーションですが、片岡ヒカリのリアクションはいたってドライだ。
「名残惜しい」 とのセリフすら途中で切れとる。
メタ的な捉え方となるけれど、これは氏家ト全先生が "空間" に頓着しないタイプだからだろうなぁって考えてる。
氏家ト全先生の漫画では登場人物の自室が稀に描かれるものの、私物の置き方がどうとかは伝えられず、特徴的なアイテムも出ない。
『生徒会役員共』 がアニメでは生徒会室で緊縛ぬいぐるみや落書きされた目安箱が繰り返し登場したのに対し、
氏家ト全先生が描く生徒会室には全然描かれないこととか思い出してみてほしい。
片岡ヒカリが山田コンスタンツと合流するわけですが、ここまでで8ページ中2ページを使っててビビった。
いやだってこれ、スローリー過ぎるよね!? って思ってさー。
もしや最終回もあまてら荘の内だけで話が終わるのでは……とも思ったよ。
かつて 「とりあえずモデル続けると思う」 くらいの気の持ちようだったコンスたんですが、
「これから本格的にモデル業やってくからね」 と知らないうちに心境にも変化のあった模様。
ううう、『プチたん』 が単行本4巻くらいに及べばモデル業への想いを強めたエピソードとか描かれたのかもなぁ。
ちなみに氏家ト全先生の漫画では普段メガネでない登場人物が眼鏡をかけるシーンが稀に描かれますが、
ここではコンスたんが顔バレを防ぐためにサングラスを装着。グッドだ。
あまてら荘の番犬を務めてたプチは花園ハナが引き取るのなー。
どうもメタ的な視点で読んでしまうのですが、漫画として重要なことは 「花園ハナとプチの別れは描かれなかった」 ということかもね。
あまてら荘の人々 (朝宮マミ、田隈サトリ、他の寮生) との別れのシーンを見ての通り、
氏家ト全先生はしめやかな場面を描くことはなるべく避けようとしているのだろう。
かつて氏家ト全先生は、やらないようにしている事をインタビューされて次のように回答されていた。
「ギャグ漫画なので、暗いネタはやらないようにしています。」 と。
離別という面の強い卒業や退寮でも 悲しさや喪失感を読者に与えないよう配慮している様子を感じられる。
田隈サトリが田隈カオルと何らかの形で一線を越えるのでは……という期待半分危惧半分の気持ちもあったけれど、
そこは決着がつかないままに田隈サトリの出番も朝宮さんの出番も終了だよ。
ついでに生活指導員の雨雲先生の出番も無い。
当然ながら、近所の獣医さんの山伏マルミ先生の再登場も無いぞ。
雨雲先生はともかく、山伏マルミ先生の再登場は望みを捨ててなかったので意外だったよ。
花園ハナ、山田コンスタンツ、片岡ヒカリそれぞれが別れるシーンには意外性もあったのですが、
ページ構成の妙でしょうか、左ページで即座にこれが仮初のお別れだったと判明するわけですよ。
前ページからページをめくった瞬間には再会までが視野に入る仕組みだ。
ドッキリとしてさえお別れの悲しさを読者に味わわせなくてスゲェ。
「今までのちょっと変わった世界は主人公が見ていた夢でした、という夢を見る」 ってつまらない最終回ネタよくあるけどさ、
氏家ト全先生だったら絶対それ描かないなと断言できるレベルだ。
どうにも俺が気負いすぎていたせいか、最初に読んだ時点では肩透かし感も覚えてしまったラストですが、
改めて読んでみれば、"あまてら荘を退寮" と "花園ハナたち3人+1匹の関係性" を両立させてるわけで、
『プチたん』 としてはこの形しかないとも言えそうなラストでフィニッシュ。
連載当初は最後に下ネタ風な次回予告が入っていた最終ページのアオリ文、
今回はシンプルに 「ご愛読ありがとうございました!!」 で締めとなっていたよ。
氏家ト全先生、『プチプチたんたんプチたんたん』 の連載ありがとうございました!
なお、『プチプチたんたんプチたんたん』 単行本3巻 (最終巻) は、7月15日 (金) 発売です。
そして当ブログでの 『プチプチたんたんプチたんたん』 感想も、今回で終了かー。
まぁまだ単行本3巻発売もあるし、もしかすると発売に合わせてマガジンで宣伝描きおろし4コマとか載るかもしれないですけど。
振り返ってみれば、俺は連載開始前の予告にあった 「"新" 氏家ワールド幕開けです。」 という説明に囚われすぎていたかもだよ。
氏家先生の作品が最終回を迎えるのは、今回で9年ぶり5度目。
いずれも今回と同様に軽く明るいノリと言える感じですが、
『プチたん』 は元々 『ハナとプチ』 という読切作品が前身という異色作だったこともあるし、
連載中期までは確かに氏家ト全先生の他作品とは違った要素も見られていた。
これまでとは異なる味わい展開を迎えるのでは……という予想もあったのですが、
担当編集者さんの交代とかあったのだろうか、途中から割と普段通りの氏家先生ワールドになっていたかと。
ともあれ面白かったことは確かだし。
『プチたん』 の連載を持って、安心して読める作品を描かれる漫画家さんなのだなという認識を新たにしました。
また新しく氏家ト全先生の作品が読める日を楽しみにしております!